「繁忙期だけ人手が欲しい」「若い人が農業に来てくれない」——日本の農業は高齢化と人手不足という二重の課題を抱えています。

そんな農業分野で注目されているのが外国人材の活用です。特に農業は、特定技能制度の中で唯一「派遣」による雇用が認められた分野(漁業と合わせて2分野のみ)であり、繁忙期に合わせた柔軟な人材活用が可能です。

この記事では、農業に特化した外国人材の受入れ方法を、制度の特徴から現場での活用のコツまで詳しく解説します。

約3.6万人農業分野の特定技能在留者数(2024年末)
派遣OK特定技能で派遣が認められた唯一の分野(漁業除く)
2区分耕種農業と畜産農業の2つの業務区分

農業分野の外国人材受入れ制度

農業で外国人材を受け入れるルートは主に2つあります。

項目技能実習特定技能1号
目的技能移転(国際貢献)人材確保
在留期間最長5年最長5年
雇用形態直接雇用のみ直接雇用+派遣OK
転職原則不可可能(農業分野内)
対象業務耕種 or 畜産耕種 or 畜産
受入れ機関監理団体経由自社 or 派遣会社
❗ 農業だけの特権:派遣雇用が可能 農業は季節によって繁閑差が大きいため、特定技能制度で唯一**派遣雇用**が認められています。派遣元は農業に精通した事業者であること、労働者派遣法の許可を得ていることが条件です。複数の農家で一人の外国人材をシェアするような活用も可能です。

2つの業務区分——耕種と畜産

耕種農業

栽培管理、収穫、選別、出荷に関する業務が対象です。

対象作物具体的な業務例
野菜播種、定植、水やり、追肥、収穫、選別、箱詰め
果樹剪定、摘花・摘果、収穫、選果、出荷準備
米・穀物田植え、水管理、稲刈り、乾燥、籾摺り
花き播種、栽培管理、切り花、包装

畜産農業

家畜の飼養管理と畜産物の集出荷に関する業務が対象です。

対象具体的な業務例
肉用牛・乳用牛給餌、搾乳、牛舎清掃、体調管理
養豚給餌、分娩管理、豚舎清掃、出荷
養鶏給餌、集卵、鶏舎清掃、衛生管理
💡 関連業務も可能 農畜産物を使った**加工(漬物づくり、ジャム製造等)や直売所での販売**も、農業の一環として行われている場合は関連業務として従事可能です。ただし、これらが主たる業務になることは認められません。

派遣を活用した繁忙期対応

農業の派遣雇用は、以下のようなケースで効果を発揮します。

  1. 繁忙期スポット:収穫時期だけ人手を確保したい場合、派遣会社経由で必要な期間のみ受入れ
  2. 複数農家のリレー方式:A農家(春〜夏:野菜)→ B農家(秋:果樹)→ C農家(冬:畜産)と季節ごとに派遣先を変更
  3. JAグループとの連携:地域のJAが派遣元となり、管内の農家に外国人材を派遣するモデルも広がっている
⚠️ 派遣雇用の注意点 派遣元は農業に関する一定の知識・経験を持つ事業者でなければなりません。また、外国人材の支援責任は派遣元にあるため、生活支援・相談体制が整備された派遣会社を選びましょう。→ [登録支援機関の選び方はこちら](/articles/how-to-choose-organization)

受入れの流れ

  1. 農業特定技能協議会への加入:農林水産省が運営する協議会に加入(受入れ後4か月以内)
  2. 人材の選定:農業技能測定試験合格者の採用、技能実習からの移行、派遣会社の活用
  3. 雇用契約の締結:直接雇用または派遣契約。農作業の内容・勤務時間を明記
  4. 支援計画の策定:住居の確保が特に重要(地方・農村部は物件が限られる)
  5. 在留資格の申請:出入国在留管理庁へ申請
  6. 就労開始:農作業の安全教育・機械操作研修を実施

採用の流れの全体像はこちら

農業ならではの注意点

住居の確保

農村部では賃貸物件が少なく、住居の確保が最大のハードルになることがあります。

  • 空き家や農家の離れを改修して寮として活用
  • 自治体の空き家バンクを活用する
  • 生活に必要な家電・家具を初期装備として用意
  • 最寄りのスーパー・病院へのアクセス手段を確保(自転車・送迎等)

労働時間と天候対応

農業は天候に左右されるため、労働時間が不規則になりがちです。

🟢 労務管理のコツ 雨天で作業ができない日の扱い(休業手当 or 別業務への振替)を就業規則に明記しておきましょう。また、早朝作業が多い農業では、労働時間の管理をタイムカードやアプリで徹底することが重要です。→ [労務管理の基本はこちら](/articles/labor-law-basics)

安全教育

  • 農業機械(トラクター、コンバイン等)の操作研修を母国語で実施
  • 農薬の取り扱いと防護具の着用を徹底
  • 熱中症対策(水分補給、休憩時間の確保)
  • 動物の扱い方と衛生管理(畜産の場合)

「ベトナムからの特定技能の方が来てくれて、収穫が本当に助かっています。最初は機械の操作に不安がありましたが、動画マニュアルを作ったら2週間で一人で作業できるようになりました。冬場は別の農家さんに派遣で行ってもらっていて、通年で安定した雇用ができています」

北海道の野菜農家

よくある質問

Q. 農業の特定技能で受け入れた外国人に、加工・販売の業務もさせてよいですか?

農畜産物の加工や直売所での販売は、農業に付随する業務として従事可能です。ただし、これらの業務が主たる業務になることは認められません。あくまで農作業が中心です。

Q. 繁忙期だけの短期雇用は可能ですか?

直接雇用の場合、通年雇用が原則です。繁忙期だけの受入れを希望する場合は、派遣雇用を活用しましょう。派遣元が通年で雇用し、閑散期は別の農家や関連業務に派遣する形が一般的です。

Q. 外国人材に農業機械の運転をさせてもいいですか?

トラクター等の農業機械の操作は業務範囲に含まれます。ただし、公道を走行する場合は運転免許が必要です。大型特殊自動車免許の取得支援を行っている自治体もあります。

Q. 2027年の育成就労制度で農業はどう変わりますか?

技能実習が育成就労制度に移行しますが、農業分野の基本的な枠組みは維持される見込みです。転籍が認められることで人材流出のリスクが指摘されていますが、待遇改善と働きやすい環境づくりで対応しましょう。→ 育成就労制度の詳細はこちら

まとめ

📌 この記事のポイント
  • 農業は特定技能で**唯一「派遣」が認められた分野**。繁忙期スポットや複数農家のリレー方式など、柔軟な人材活用が可能
  • 業務区分は**耕種と畜産の2つ**。関連する加工・販売業務にも付随的に従事可能
  • 農村部での**住居確保**が最大のハードル。空き家活用や自治体との連携で解決を図ることが重要

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